銘柄分析シリーズ第1弾でウォルト・ディズニー・カンパニーを分析しました。
その時に、各業界における売上順位を調べたところ、映画製作、テーマパーク運営等、ほとんどの分野でディズニーを上回る売上規模を誇っていたのが、今回分析するComcast Corporation(コムキャスト)です。
あの超エンタメ帝国のディズニーを上回るコムキャストとはどういう存在なのか、ディズニーを上回るということは投資対象としてもディズニーより良いのではないか!?
ケーブルテレビ事業、情報通信事業、ユニバーサルスタジオ運営等、多角的な経営を行っているコムキャストとは果たしてどのような存在なのか分析してみました。
そして、コムキャストの将来を占うための、重要な3要素について最後にまとめました。
目次
コムキャスト概要
- 1963年設立
- 本社はペンシルバニア州フィラデルフィア
- NASDAQ証券取引所上場(ティッカー:CMCSA)
- 社名の由来は「Communications and Broadcasting(コミュニケーション・アンド・ブロードキャスティング)」を略したもの。
- ケーブルテレビ会社の買収に加え、2009年NBCユニバーサル(ユニバーサルピクチャーズやユニバーサルスタジオ)をGEから買収、2015年ユニバーサルスタジオジャパン株式51%取得(17年完全子会社化)、2016年ドリームワークスアニメーション(シュレックなどを製作)買収、2018年Sky買収、とM&Aによる多角化を進めてきました。
- 様々な事業を展開していますが、大きく分けて3つの構成群に分かれます。
XFINITY
XFINITYというサービスブランド名で、ケーブルテレビ、高速インターネット、携帯電話回線事業、スマートホームデバイス事業等を展開。
NBCUniversal
番組制作や映画の製作。配給事業を展開。ユニバーサルスタジオもNBCUniversal傘下で運営されています。
SKY
2018年第4四半期に買収したSKYがヨーロッパで展開する事業です。
ドラマ、映画、ニュース、スポーツ番組の制作・配信やインターネット事業を行っており、コムキャストがアメリカ中心に行っている事業のヨーロッパ版という感じ。
SKYはイングランドプレミアリーグの放映権を保有する等、サッカーファンはよく見聞きする存在です。
- ユバーサルスタジオはオーランド(フロリダ州)、ハリウッド(カルフォルニア州)、大阪、シンガポール。現在、2021年の開業を目指し、北京に新たなユニバーサルスタジオを建設中
- エリア別売上高比率(2018年12月期)
かなりアメリカに偏った売上構成です。2018年第4四半期にヨーロッパで有料放送やインターネットプロバイダー事業を展開するSKYを買収したことは、米国偏重からの脱却に大きな助けになりそうです。 - 事業領域別売上高比率(2018年12月期)
Sky2018年第4四半期に買収した為、売上として取り込む期間が短く、総売り上げの4.7%に留まっていますが、2019年1月~6月の実績では、Skyの売上は総売上の17.9%を占めます。 - 各業界順位多くの分野で業界1位という凄い結果でした。特にあのエンターテイメントの大帝国、ウォルト・ディズニーより上位の分野がほとんどというのが、インパクト大きすぎます。
ウォルト・ディズニーについては、以下の記事を合わせてお読みください。
業績推移
売上高・EBITDA・当期利益推移
売上高、EBITDA、純利益共に綺麗な右肩上がりです。
2017年度のみ純利益が突出していますが、これは米国法人税制改革により法人税率が34%から21%に下がったことにより、将来に繰り延べていた税金費用(繰延税金負債)の戻りを認識し取崩益が発生したことによるものです。
通常の業績推移を考える際は特別な数値として除外するか、税前利益で比べてみるのが良いです。
EBITDAマージン推移
マージン率は少しずつ低下していますが、30%もあるので、優秀な数字です。
キャッシュフロー推移
2018年度はSkyを382億ドルで買収した影響でフリーキャッシュフローが赤字になっていますが、それを除くと営業キャッシュフローの範囲内での投資となり、非常に強いキャッシュフローを記録しています。
株価推移
9年株価増減率推移
S&P500の2倍以上のパフォーマンスです。
そして、ライバルのウォルトディズニーよりもこの期間のパフォーマンスは優れています。
ケーブルテレビやブロードバンドということで、AT&Tとも比較してみましたが、その差は歴然です。
この差は2009年のNBCユニバーサル買収によって、早くからコンテンツビジネスへの転換に舵を切ったコムキャストの先見の明にあったと考えます。
(AT&Tは2015年に衛星放送のDirect TVを買収、2018年にTime Warner買収。Direct TVは不調。)
3年株価推移
ここ3年の株価に関しては、下は30ドル、上は44ドルのボックス圏での推移でした。
19年8月にボックス圏の上値を突き抜けたようにも見え、ボックスを突き抜け上値を目指すのか、それともボックスの中の高値で終わるのか判断は難しいところです。
バリエーション指標
(19年9月30日時点)
PER: 17.4倍
配当利回り:1.87%
配当性向:33.2%
連続増配:8年
バリュエーション面では割高感はありません。
配当利回りは2%に満たず、高配当というわけではないですが、安定した業績と潤沢なキャッシュフローに加え、配当性向は30%強なので、将来の増配余地は大きいです。
コムキャストの将来を占う3要素
①ケーブルテレビ顧客基盤を維持する取組み
コムキャスト社の祖業であるケーブルテレビは衰退ビジネスです。
一昔前までは、インターネットとケーブルテレビというのはセットが当たり前でしたが、月額料金が高額になりがちなうえ、Netflix、Amazon Prime Videoなど、ネット環境さえあればケーブルテレビよりはるかに安く、そして番組表の時間に縛られずに見たい時に番組を見ることができるストリーミングサービスが拡大し、ケーブルテレビは不要という人が増えたからです。
その為、コムキャストもケーブルテレビ加入者は年々、減少しており、減収要因になっています。
一方で、インターネットプロバイダー事業は、オンデマンドの動画サービスの拡大を背景に加入者増、顧客当たり利用料も増加し、ケーブルテレビのマイナスを上手く補えています。
このような状況を打破すべく、コムキャストは、2019年9月NBC Peacockという新サービスを2020年4月から始めることを発表しました。
これは、ケーブルテレビ契約者は、広告付きだけど利用料無料のプラン(アドモデル)or 月額利用料を支払い広告がないプラン(サブスクリプションプラン)を選択して、テレビを視聴出来るというもので、既存のケーブルテレビ加入者に追加の費用負担を生じさせることなく、新たなサービス提供を行うことで、顧客の維持を目指していると思われます。
まだNBC Peacockは立ち上げ準備中で詳細は発表されていませんが、15,000時間分のコンテンツを用意し、また2020年東京オリンピックの放送も行う予定です(NBCは2032年までのオリンピック放映権を保有)。
②配当性向の上昇は当面見込みづらい
配当性向が30%強、業績は好調ということで、配当性向を徐々に引き上げていき株主還元を強化することを投資家としては期待したいところですが、そうなる可能性は低いと思います。
コムキャストは、ビジネスの成長・拡大にまだまだ資金を必要としているからです。
M&A以外の資金需要としては、
- 2018年はコンテンツへの投資だけで240億ドルを投資。今後もコンテンツ強化に継続方針とCEOが投資家向け説明会での発言
- ユニバーサルスタジオも拡大中2022年開業を目指して、北京にこれまでで最大規模のパークを建設中。
決算書のキャッシュフロー表にもこれによる費用の支払いが載っていました。
2019年度は半年で450百万ドルお金が出ていってます。
ユニバーサルスタジオジャパンは、スーパーマリオ等をテーマにした新エリア、「SUPER NINTENDO WORLD」を建設中(2020年開業予定)です。
まだ全容はわかりませんが、以下がYoutubeの公式動画です。ユニバーサルスタジオオーランドでは、「Universal Epic Universe」という4つ目のテーマパークを建設中。詳細はまだ不明ですが、CEOは「最も没入型で革新的なユニバーサル・スタジオ・テーマパークである」というコメントを残しています。
- SKY買収の為の借入金の返済SKY買収に394億ドルをかけたコムキャストは借入金が2018年度末は前年度末に比べて1.7倍になりました。この借入金の返済を当面優先させていくと、CEOがゴールドマンサックス主催の投資家向け説明会(2019年9月18日)でコメントしていました。
③SKY買収効果と巨額ののれん
SKYの買収により、ヨーロッパでのビジネス拡大のプラットフォームを手に入れたコムキャストですが、買収金額は394億ドル。
驚きだったのは、のれんの大きさです。
10-Kによると、394億ドルのうち299億ドルがのれんとして計上されていました。
つまり、買収金額の75%がのれんということになります。
メディア系は顧客基盤や顧客とのネットワーク、顧客のサービスに対するロイヤルティなど目に見えない要素が多いので、買収となるとのれんが大きくなりがちなのでしょうか。
コムキャストの目論見は、アメリカ、ヨーロッパで各々持っている強みを相互に活用、両地域でのさらなる成長を目指すというものです。
のれんは事業が目論見通りにいかないと減損の対象になるので、SKYによる事業拡大は必ず成功させなければいけません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
M&Aで多角化経営に成功し、各事業体でディズニーをも上回る売上を稼ぎ出すコムキャストは、次なる一手を着実に打っていますが、NBC Peacockは来年4月、各ユニバーサルスタジオも来年以降と収益貢献はまだ先という状況で、株価は一本調子には上がらないのではないかとみています。
小さな積み重ねで、将来を豊かに
これをモットーに米国株投資を進めていきます。
※投資は自己判断で
『米国株銘柄分析シリーズ第1弾【DIS】ウォルト・ディズニー・カンパニー 超巨大エンターテイメント帝国に潜む3つの不安要素とは?』は以下リンクからお読みください。