【海外駐在員も運用可能】企業型確定拠出年金を駐在員目線で解説①

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日本の証券会社のほとんどは日本の居住者を対象としたサービスを展開しており、原則は海外居住者はサービスを利用できません。海外駐在になると、日本でやっている投資手段に制約が生じますが、企業型確定拠出年金については、駐在中であっても継続が可能です。本記事では、企業型確定拠出年金とはどのようなものか、始めるにあたって何を確認する必要があるか、駐在員の目線で解説します。

目次

企業型確定拠出年金とは?

特徴

確定拠出年金とは、一定額を毎月拠出して、運用することで将来、退職金や年金のような形で受けることができる制度のことです。
人生100年時代、国民年金や厚生年金ではカバーしきれない老後の生活費を自ら蓄え、運用して備えなさい、という国の指針が根底にあります。

企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)の特徴は以下の通りです。

  • 企業が掛金を毎月従業員の年金口座に積み立て(拠出)する
  • 拠出金は所得控除扱いとなり、以下のように掛け金部分は所得税、住民税、社会保険料の対象になりません

結果、積み立てによる税負担軽減効果は、以下のようになります。

※期間中年収が一定である前提。給与所得控除、社会保険料14%、基礎控除を引いた額を課税所得とし、所得税・住民税を課税した場合の試算の為、実際の数値とは異なる場合があります。

  • 従業員自らが年金資産の運用を行う
  • 運用成績によって将来受け取れる金額は変動する
  • 定年退職を迎える60歳以降に、積み立ててきた年金資産を一時金(退職金)、もしくは年金の形式で受け取る
  • 積み立てた年金資産は原則60歳まで引き出すことはできない

これとは別に個人型確定拠出年金(iDeCo)という似たような確定拠出年金もありますが、こちらは2019年8月2日現在、企業型DCとの併用はできません。
併用できないことが、iDeCoの加入者の伸び悩みにつながっているとして、併用できるように政府が法改正を目指しているという記事が、2019年7月29日の日経新聞に掲載されており、今後の動向には要注目です。

日本経済新聞より

企業型とiDeCoの主な違いは、以下です。

【メリット】

  • 企業型DCは掛け金拠出による節税効果を自動的に給与の手取り額に反映してくれる。
    ⇔ iDeCoは確定申告で税還付を受ける必要がある。
  • 企業型DCは口座管理費が会社負担
    ⇔ iDeCoは自己負担(年数千円)

【デメリット】

  • 企業型DCの運用先は勤務先が選んだ1社のみで選択肢はない
    ⇔iDeCoは証券会社や銀行を比較して選択が可能
  • 一般的にSBI証券楽天証券のようなオンライン証券が展開するiDeCoの方が運用商品ラインナップが豊富

毎月の拠出について

拠出可能な金額は上限が決められています。

拠出金額上限
他の企業年金基金がある場合:月27,500円まで
他に企業年金基金がない場合:月55,000円まで
 ※他の企業年金:厚生年金や確定給付年金

この拠出した資金を、各々の企業型DCで用意された運用商品のラインナップから自分で選んで、運用をしていきます。

尚、金融機関の企業型DC説明や新聞などのメディアにおいて、掛け金は企業が拠出すると書かれている点、少し説明不足だと感じています。

確かにその通りではあるのですが、まるで従業員は持ち出しがなく、企業がこれまでの給与に追加して拠出してくれるように聞こえてしまいます。
もし、そうなら全員加入しますよね。

従業員の負担はなく会社が掛け金を拠出してくれるような素晴らしい会社も世の中探せばあるのかもしれませんが、私の勤務先ではいくら拠出するかを決めたら、その分が手取り給与から差し引かれ、それを会社が掛け金としてDC側に拠出しますので、掛け金は100%自己負担です。

運用商品について

企業DCの運用会社によって違いはありますが、主に以下のカテゴリーのものがラインナップされています。

  1. インデックス系の投資信託(日本、先進国、途上国)
  2. アクティブ系の投資信託 (日本、先進国、途上国)
  3. バランス型の投資信託(株、債券等様々な投資商品をミックス)
  4. 国内や海外の債権の投資信託
  5. 定期預金
  6. 保険型の投資商品

毎月の拠出額を何%どの商品の購入に充てるか設定し、その設定に従って、毎月自動的に運用商品を購入し、積み立てていきます。

運用条件の変更について

最初に決めた運用条件は変更可能です。

スイッチング:
保有している運用商品を売却して別の運用商品に変更すること。
(例:国内株式中心の投信Aを売却し、海外株式中心の投信Bを購入)

配分変更:
今後の掛け金拠出分について、購入する運用商品の割合を変更すること。
既存保有分には影響はありません。

運用時の税金

企業型DCでは、運用時に利益が出ても、課税されません。
※通常の株式やETF、投資信託の取引では、利益に対して約20%(所得税15%、住民税5%)が課税されます。

受け取る時の税金について

60歳以上となり、企業型DCからお金を引き出す際は、受け取り方によって2つの税優遇があります。

  • 年金の形で受け取る
    公的年金等控除(年金等の収入が65歳以上で120万円まで非課税)
  • 一時金で受け取る
    退職所得控除(企業型DC(退職した場合はiDeCoも通算)の加入年数に応じて一定額まで非課税)

企業型DC加入を決める前に知っておくべきこと

企業型DCの制度について

税金の優遇措置について

企業型DC(iDeCoも同様)の税の優遇措置(以下)について、これらは3つとも揃っていないと意味がありません。

【3つの税の優遇措置】

  1. 掛け金の所得控除
  2. 運用時の非課税
  3. 引き出し時の2種類の控除

簡単な例で説明します。

前提
・Aさんが毎年10万円を10年間拠出し、60歳を迎え、全額を引き出しました。
・10年間で運用成績は合計20万円利益が出た為、DCの評価額は120万円でした。
・税率はシンプルに20%と仮定する。

まず、Aさんは10年間の掛け金に対して税金が発生しなかったので、10万円×10年間×20%=20万円税金をセーブできました(①)。

そして、運用成績についても非課税の為、10年間の利益20万円×20%=4万円税金をセーブできました(②)。

お金の引き出し時の税金のかかり方について金融機関やメディアの説明がなんとなくわかりづらく感じるのですが、60歳になりDCからお金を引き出す際、①、②で税金を払っていない為、DCの評価額120万円が丸々、課税対象となります
なぜなら税制優遇で税金を掛け金拠出、運用益発生時に支払っていないからです。

但し、最後の引き出し時に 公的年金等控除退職所得控除を活用できるので、120万円に対して、個々人の状況に応じて、一定金額が非課税になるので、トータルでも税金を軽減可能という仕組みになっています

もし、 公的年金等控除や退職所得控除がなければ、120万円×20%=24万円の税金が発生し、それは①+②の合計額と同額となります。
この場合は単に税金を60歳以降に繰り延べているだけで、税金の支払い額そのものをセーブできていることにはなりません

税金を本当にセーブできるかは60歳以降の公的年金等控除や退職所得控除に依存しており、このような控除が今後何十年も維持されることを前提にしていることを認識しておく必要があります。

社会保険料が安くなる影響⋰

企業型DCの拠出により、掛け金に対しては所得税、住民税、社会保険料がかからないというメリットをお伝えしましたが、社会保険料については、注意が必要です。

支払う社会保険料が安くなると、将来の年金受取額が下がるからです。

企業型DC加入検討の際、企業型DCのコールセンターに電話して質問したところ、年金受取額が少し下がっても、基本的には非課税によるメリットがそれを上回るとの回答でした。

駐在員が把握しておかなければならないこと

掛け金に対する所得控除の取り扱いについて

掛け金に対する所得控除は、日本で給与をもらい、その一部が掛け金となり所得税、住民税、社会保険料の対象外となることによるメリットです。

海外駐在員は、日本国外で働き、給与を得るので、日本の所得税や社会保険料とは無関係になりますので、普通にいけば掛け金に対する所得控除のメリットを得られません

私の勤務先の場合は、加入検討時に確認したところ、大丈夫だったので、私は加入を決めましたが、加入前にご自身の勤務先に必ず確認しましょう

【私の勤務先の場合】

  • 掛け金拠出は、半期ごとのボーナスから差し引かれ、以降6カ月に分けて拠出される
  • ボーナスについて、日本で税金や社会保険料は実際には、発生しないものの、日本勤務の社員と税金面での収入の不公平が生じないように、会社がバーチャルで税金と社会保険料相当額を差し引いて、支給している。
  • 企業型DCに加入した場合は、このバーチャルで差し引く税金、及び社会保険料相当額を会社が減額するので、結果、海外駐在中でもメリットは享受できる

制度が日本の政策に依存する面、多少の不安はありますが、海外駐在でも運用可能で税金のメリットもあるので私は企業型DCに加入しました。

次の記事では、私がどのような考えに基づき、運用商品を選んだかを紹介していきます。

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【海外駐在員も運用可能】企業型確定拠出年金を駐在員目線で解説②

2019-08-20

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